君の思いに届くまで
16章
16章


体中が痛くて重い。

頬に柔らかい風を感じてゆっくりと目を開けた。

白い壁が見える。

ツンと鼻につく臭い。

ここは病室?

ピッ、ピッ、ピッ・・・と規則正しい音が静かな部屋の中に響いている。

「ヨウ?」

私の耳元で声がした。

声の方に首を傾ける体力さえも奪われた状態で目線だけ動かす。

「りゅう・・・」

琉の今にも泣きそうな目が私の目の端に映る。

「よかった」

琉はそのまま私の手をとり自分の額に当てた。

「このまま、目を覚まさなかったらどうしようかと思ってた」

再び顔を上げた琉の目からは涙がこぼれていた。

その手のぬくもりと愛しい琉の目に私のすさんだ心が少しずつ癒えていく。

私は少しだけ微笑んで目をつむった。

その時だった。


「Life isn't about waiting for the storm to pass.It's about learning to DANCE in the rain.」

その忘れもしないフレーズが私の耳に飛び込んできた。

一旦つむった目が勝手に開く。

そして、琉の方に顔を向けた。

琉は優しく微笑んだまま、もう一度そのフレーズを口ずさむように言った。

「雨の中、俺はびしょ濡れで泣いてる少女にこのフレーズを伝えたんだ。その少女と共にその嵐の中に飛び込みたいと思ったから」

これは夢?

頭の中がまた鮮明でない自分が生きているのかどうかすらわからなかった。

あの森の奥深くで私は倒れ、天に召される前に神様が見せてくれた幸せな夢?





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