君の思いに届くまで
琉が重ねた手が私の手をぎゅっと掴んだ。

「ヨウの本心はどっちだ?」

これまでの柔和な言動からは考えられないくらいの強い口調だった。

顔を上げた先に、僅かに潤んだ薄茶色の瞳優しく見つめていた。

「急なことだし、お世話になっているクルーズ夫妻にも申し訳ないから」

「クルーズ夫妻には俺から話すよ。大事なのはヨウの気持ちだ」

私の気持ちは決まっていたけれど、そんな唐突に決めて琉に伝えられる話じゃないことくらい酔った頭でもわかっていた。

どうしていいかわからなくてうつむいたまま小さな声で呟いた。

「私、まだ琉のこと全然知らないし」

琉はすかさず答える。

「今から俺のこと知っていけばいいだけだ」

今から琉のこと知っていくって?そんな簡単に言わないでほしい。

だけど、その言葉に自分の迷いが一瞬揺らぎそうになる。

琉の熱い眼差しを見つめていたら気持ちが持って行かれそうになってしまう。

「もし、琉がものすごく悪い人だったら?」

「そう聞かれて、もし俺がすごい悪人だったら正直に答えると思う?」

琉はおでこに手を当てて笑った。

悪い人なわけがない。そんなこと初めて顔を合わせた時からわかってるはず。

マミィが太鼓判押すくらいの優秀でナイスガイなのに。

「でもこんなこと信じられない。出会ってすぐなのに・・・どう考えたってあり得ないわ」

「あり得るとかあり得ないではなくて、俺とヨウの気持ちが一番大事じゃない?」

琉の熱い手の平が私の頬に触れた。

頬に触れられただけで電気が走ったように振るえた。

頭の中が混乱してる。誰かを好きになるのにこんなに混乱したのも初めてだった。

「人間はいつだって理由や説明を求めすぎるんだ」

そして琉は自分の拳を胸に当てた。

「俺のここにある気持ち正直に言おうか?」

熱い手の平からドクンドクンと強く血液が流れる音が聞こえてくる。

「今すぐにでもヨウを抱きしめてキスしたい」

胸の奥がぎゅうっと何者かに締め付けられる。意識が一瞬遠のく感覚。

自分を見失いそうで恐い。

半分意識がどこかに行ってしまった状態だった。

「だけど、ヨウの気持ちが決まらないなら俺は強引に君の嫌がることはしない。それだけは約束する」

琉の手がようやく私の頬から離れたと同時に、一気にホールの喧騒が耳に響いてきた。

今のは夢?



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