君の思いに届くまで
「その話の続きはわかったって顔してるけど?」

琉はかすかに表情を緩めた。

どうしてか、琉には私のことが全てお見通しのような気がする。

そんなに私って顔に出てるの?

こんなに分かりやすいのに一筋縄ではいかないなんて、やっぱり惑わされてるわ。

そう思いながらも琉の問いかけに黙ったまま頷いた。

「そのお世話になった官僚の娘さんを俺にって。家柄も申し分ないし、その娘自体、品も性格もよく間違いなかった。両親もそりゃ喜んでね。それに、相手はイギリスの官僚だよ?外交官の息子っていう立場もあって断るなんてことできるはずもない」

琉は遠い目をして深いため息をついた。

「なんだか今時ですよね。好きでもない相手と結婚の約束されちゃうなんて。江戸時代じゃあるまいし」

思わずふっと出て来た私の言葉に、琉のうつろな表情が一転して笑顔になった。

「全くヨウの言う通りだ。時代錯誤だよね」

「断れないなんてあり得ない。この民主主義国家で」

「まぁ、民主主義ってったって色んな見えない事情ってもんはいつの時代もあるもんだ。ヨウだってこれからわかってくるさ」

私は頬を膨らませた。

「子供扱いしないで下さい。10代でもあるまいし。私そこまで経験値低くないですから」

「ああ。そうだったね、ごめん」

琉は素直に謝ると笑顔を向けたまま私の頬をそっと撫でた。

ドクン。

な、なに?

またドキドキしてきたじゃない。

その琉の長い指先はとても熱かった。

フィアンセが自分の選んだ相手じゃないってことを知ってしまったら、私の押さえていた気持ちはちょっとした弾みでまた飛びだしていきそうになる。



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