君の思いに届くまで
しばらくの沈黙が続いた後、琉は「なるほどね」と小さく呟いた。
「恐らくヨウはヨークで俺がささやいた言葉は全てまやかしだと思っているんだね。ここに来て、俺にだまされたと今感じてる」
琉の瞳は相変わらず薄茶色で澄んでいた。
その目にだまされたんだ。
まるで真実を言ってるみたいな誠実な目をしていたから。
この期に及んで、さっきの暗闇でのキスを思いだして胸が熱くなる。
私は琉から顔を背けて頷いた。
「ヨウってほんと一筋縄ではいかないね。そういうところがますます惹きつけられるけど」
またそんな言葉を並べて。
真に受けちゃ駄目だと心の中で叫びながらも、琉の言葉が私の耳を熱くした。
「まず、フィアンセがいたら誰かを好きになってはいけない?」
私はゆっくりと琉の顔に視線を上げた。
薄くて形のいい唇が優しく微笑んでいる。
「気持ちは縛れない」
もう少し視線を上げると、琉が今までになく険しい目をして私を見つめていた。
こんな琉の目を見たのは出会ってから初めてだった。
「フィアンセは、いわゆる日本で言う許嫁だけど自分の意思で決めた相手じゃないんだ」
「それって?」
「俺の父は外交官としてこちらで長年日本大使館に勤務している。イギリス官僚とも親交が深くてね。その一人の官僚ととりわけ親子ぐるみで親しくしていたんだ。俺の就職先、ロンドンの大学の講師を斡旋してくれたのもその方なんだ」
なんとなくその先の話が見えていた。
私の緊張した体が少しずつ緩んでいく。
「恐らくヨウはヨークで俺がささやいた言葉は全てまやかしだと思っているんだね。ここに来て、俺にだまされたと今感じてる」
琉の瞳は相変わらず薄茶色で澄んでいた。
その目にだまされたんだ。
まるで真実を言ってるみたいな誠実な目をしていたから。
この期に及んで、さっきの暗闇でのキスを思いだして胸が熱くなる。
私は琉から顔を背けて頷いた。
「ヨウってほんと一筋縄ではいかないね。そういうところがますます惹きつけられるけど」
またそんな言葉を並べて。
真に受けちゃ駄目だと心の中で叫びながらも、琉の言葉が私の耳を熱くした。
「まず、フィアンセがいたら誰かを好きになってはいけない?」
私はゆっくりと琉の顔に視線を上げた。
薄くて形のいい唇が優しく微笑んでいる。
「気持ちは縛れない」
もう少し視線を上げると、琉が今までになく険しい目をして私を見つめていた。
こんな琉の目を見たのは出会ってから初めてだった。
「フィアンセは、いわゆる日本で言う許嫁だけど自分の意思で決めた相手じゃないんだ」
「それって?」
「俺の父は外交官としてこちらで長年日本大使館に勤務している。イギリス官僚とも親交が深くてね。その一人の官僚ととりわけ親子ぐるみで親しくしていたんだ。俺の就職先、ロンドンの大学の講師を斡旋してくれたのもその方なんだ」
なんとなくその先の話が見えていた。
私の緊張した体が少しずつ緩んでいく。