君の思いに届くまで
「それから、」

私の頬から琉の手がすっと離れた。

「ヨウの体目当てっていう点については、きっぱり否定したいところだけど俺も男だし完全には否定できない。惹かれた女性は抱きたいって思うものだからね」

琉は私の頬を撫でた手を自分の肩の上に置いた。

「ただ体だけが目的じゃないってことは断言できる。俺ももう一度ヨウに会いたかった、その一心だけだ」

その琉の美しい姿形と所作に私はぼーっとしばらく動けなくなっていた。

「俺の本心はそれだけ。とてもシンプルだろ?」

隣の紳士が席を立った。

そのイスを引く音に我に返る。

「だけど・・・だけど、こんな私にあなたが惹かれるなんて信じられないもの。もっと素敵な人はたくさんいるわ」

「そうかもしれないね」

「だったらどうして?」

「どうしてだろう」

「はぐらかさないで。だから信じられないのよ。そんな一瞬で恋に落ちるなんてあり得ないもの」

琉は少し寂しそうに笑った。

「ヨウは覚えてないかもしれないけど、俺にはしっかりと刻まれた記憶があるんだ」

「記憶?」

なんなのそれは?

私が覚えてないってどういうこと?

「俺、5年前だったかな、一度日本に行ったことがあるんだ」

「日本に?5年前?」

5年前の記憶のカードをめくるのはたやすいことではなかった。

5年前っていうと、私が高2の頃だ。





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