君の思いに届くまで
男女の比率は少し女子が多くて、皆英語の成績がよい子達ばかりだった。

大学も英文学科へ進みたいという子がほとんどで俺のつたない授業にも必死についてきてくれた。

かわいかったよ、皆。

授業の後、生徒達と一緒にカフェに行ったり、都内の街を案内してもらったり。

俺は俺でイギリスの生活のことを皆に聞かせたりね。

日本と違う文化に興味津々で時間がいくらあっても足りないくらいだった。

そうこうしている間に1週間が過ぎていった。

驚くほど早い1週間だったよ。

最終日の授業を終えて、皆が帰ってしまった後のガランとした教室でぼんやりと座ってた。

ほどよい充実感とほどよい疲労感に気持ち良く力が抜けていくような感じでね。

その時、俺のジャケットの内ポケットに入った携帯が鳴った。

父からのメールで「明日イギリスに発つ前に親族が一同に介して夕食会をすることになった。至急Bホテルまで来なさい」とのことだった。

俺は慌てて教室を後にした。

父は時間にはすごくうるさいタチでさ。

急いで学校を飛びだして駅に向かう途中、思いもよらずいきなりスコールみたいな雨が降ってきて。

その時傘を持ち合わせてなかった俺は慌てて雨宿りできるところを探したんだ。

川辺の土手の上に、屋根付きのベンチが一つあるのを見つけてバッグを頭に乗せたままその方へ向かって走ったよ。

「まいったなぁ」なんてつぶやきながら、俺はびしょ濡れになった腕や頭をハンカチで拭いた。

ベンチの横で雨が止むのを待っていたら、傘を持たない一人の少女が俺と同じように雨を避けて飛び込んできた。



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