君の思いに届くまで
いつもの雰囲気じゃない健に見つめられている。

思わず目を逸らした。

「ごめんね。いっつも」

「全くその通りだよ」

「私ももうすぐアラサー世代突入だもんね。いつまでも健に頼ってばっかじゃだめだよね」

健の方に顔を上げると、いつものように笑って私を見ていた。

その笑顔にホッとする。

「俺もいつまでもお前のそばにいれるかわかんないんだからさ、そろそろ自己解決できるようにならなくちゃな。ヨウは大丈夫だって。自分の思うとおりに動けば間違いないってもっと信じてみれば?」

「全然自信なんてないよ。とりわけ、琉との再会は。このままそっとしておくべきなのか、琉が思い出すまでモーションかけるべきなのか」

「はは、ほんとくだらね」

健は額に手をやって笑った。

「ヨウは何をそんなに悩んでるの?ずっと会いたかった琉に会えたんだろう?」

「そうだよ。だから迷うんじゃん。うまくいけばいいけどうまくいかなかったらって考えたら恐い」

「恐い、か」

「そう今更だし、三十路前の女が何ほざいてるって感じだけど、琉と繋がらなかったらって思ったらその一歩が踏み出せないんだ。何も動かず自然の成り行きに任せるのが傷つかなくていいのかもしれないって」

「自然の成り行きなんか待ってたらおばあちゃんになっちゃうぞ」

私は苦笑しながら、健の腕を軽く叩いた。

「でもさ、恐くて前に踏み出せないって気持ちは、俺すげーわかる。大人になった今だってずっと恐いさ」

健は思い詰めたような目で遠くを見つめていた。
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