君の思いに届くまで
その目はとてもイライラしていたけれど、すぐにふっとあきらめに似た目の色に変わった。

「そうか。そんなにいいんだ。琉って奴は」

「だから、そんな小馬鹿にした言い方しないで。私、真剣にどうすればいいのか悩んでるんだから」

「・・・俺にはわからない」

「わからない?」

「ヨウの幸せがどこにあるのか」

健は手元に視線を落としたまま、運ばれてきた冷酒を口に含んだ。

なんだか今日の健はいつもと違っていた。

いつもなら、もっと明るく笑いながら私を元気づけてくれるのに。

「健、今日はいつもと違うよ。何かあった?」

健は寂しそうに笑うと、「とりあえず食べようぜ」と言いながら頼んだお刺身を指刺した。

何も言わず、頼んだ食事を食べていく。

琉の相談したいのに、いつもと違う健の空気に飲み込まれていた。

きっと何かあったんだ。

私ばっかり相談して、いつも健の話聞いてあげれてなかったから。

その横顔を見ながら、なんだか自分が嫌になっていた。

琉のことだって、結局は自分の事ばかりで琉が今どんな気持ちでどういう状況にいるのかなんて想像もできなかった。

私がいくら琉のこと思っていたって、どうしようもないことだってあるのに。

そんな琉の事を、健に相談しようなんて本当に勝手で浅はかだよね。そういうのを自分勝手って言うんだ。

「健、何かあったなら今日は健の話聞くよ。いつも聞いてもらってばっかだもんね」

健の箸が止まり、私に顔を向けた。

「俺の話なんか聞いたら、ヨウは困るだけだぜ」

「そんなことないよ」

「そんなことあるんだって。俺のことはいい。とりあえずヨウの事が優先だよ。だってそのために今日は会ってんだからさ。俺もさっきはイライラした物言いして悪かったよ。もう大丈夫だからさ」

健はゆっくりと箸を置いて、体を私の方に向けた。

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