君の思いに届くまで
琉はソファーの前のテーブルに自分のマグカップを置いた。

そしてゆっくりと私の腰に手を回し、私の体を引き寄せる。

温かくて大きな腕が私の体を包んだ。

琉は、私の手の中にあるマグカップをそっと取り上げてテーブルに置く。

「ヨウ」

優しい声が私の耳元に響いた。

それだけでとろけてしまいそうになるほど、どうしようもないほど好きな声。

「ヨウを愛してもいい?」

潤んだ琉の目を見つめ返して強く頷いた。

「もし、後悔することになったとしても?」

後悔。

「後悔することになっても後悔しないわ」

私はきっぱりと答えた。

「ヨウは強いね。ますます魅力的だ」

琉の手が私の頭の後ろに添えられ、顔が近づく。

柔らかくて熱い唇が私の口を包んだ。

まるで自分じゃないような自分が琉を全身で求めていた。

琉は私にとっては初めて感じるような愛し方をたくさんしてくれた。

だけどどの愛し方もとても丁寧で優しくて、溢れるお互いの思いをすくいながら。

琉の体温も手の平の形も時々ささやく琉の声も、全てが私の中に刻まれていく。

忘れちゃいけないって私の体中が叫んでいた。

誰かを好きになって、愛して涙があふれるってことも初めてだった。

どれくらいの時間が過ぎたんだろう。

窓の向こうがうっすらと白んできた頃、琉は静かに寝息を立て始めた。

私は琉の胸の上にそっと手を置いてそんな姿ですら自分に必死に留めておきたいと願っていた。




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