君の思いに届くまで
体が火照っているせいか全然眠くない私は琉が寝ているベッドからそっと抜け出した。

「・・・・・・ん」

琉の目がうっすらと開き、私の腕を掴んだ。

起こしちゃった?

かすれた声で琉が尋ねる。

「どこいくの?」

「寝れないから、外の空気吸ってくる」

琉はそれを聞いて安心したような表情で頷いた。

また目を閉じた琉を確認すると、スリッパに足を入れ寝室を出た。

玄関の扉を開けると吹き込んできた冷たい空気が私の火照った体を冷やす。

朝靄が庭を幻想的に浮かび上がらせていた。

こんな霧は初めてで恐る恐る外に踏み出す。

小さい山鳥が囀ずりながら何匹か飛び立つのが聞こえた。

ゆっくりと歩みを進めていくと、目の前に緑の細かい葉が当たる。

よく見るとトゲがあった。

バラだろうか?

こんなにも見えないって不安なんだって初めて感じた。

バラの横にうっすらと木でできたベンチがある。

手で探りながらゆっくりと腰をかけた。

ふぅ。

冷たい空気はとても澄んでいて、深く深呼吸すると身体中からエネルギーが溢れてくるようだった。

昨晩琉に愛されて心地よく疲れた体も癒してくれる。

恐いくらいに全てが満ちたりた気持ちになっていた。
< 63 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop