君の思いに届くまで
白鳥がゆったりと泳ぐ川辺の近くに座った。

ここだけ時間がゆったりと流れているような風景の前。

「このまま時間が止まっちゃえばいいのに」

と呟いた。

「ヨウはいつまでいられるの?」

琉は前を向いたまま静かに尋ねる。

「マミィには一応三日間で帰るって言ってるの。ここに送る時もすごく心配していたからあまり長くはいられないわ」

琉はため息をつきながら言った。

「ずっとここにいてほしいのに」

私もだよ。

ずっと、ずーっと琉のそばで、琉との時間を抱きしめていたい。

だけど、そういう訳にはいかない。

「ヨウ、好きだよ。とても」

琉の手が私の頬に触れ、そのまま唇を塞がれた。

こ、こんな場所で?!

って一瞬慌てるも、ここは日本じゃない。

見回すと、抱き合いながらキスをしているカップルもたくさんいた。

「かわいいね。慌てた?こんな場所でキスなんて」

琉は潤んだ瞳で優しく笑った。

慌てていた自分を見られていたことに恥ずかしくなる。

私って、全然だめだ。

いくら背伸びしたって、琉にはまだまだ届かないような気がした。

「ごめんね」

肩をすくめて小さい声で言った。

「いいんだ。ヨウはそのままで十分、今のヨウが好きだから」

そう言いながら、琉は私の肩を抱き自分の胸に引き寄せた。

暖かい琉の体温。

その鼓動をいつまでも聞いていたい。

昨晩寝れなかったせいか、その鼓動を聞いていたら眠たくなってきた。

体が次第に重たくなり、意識が遠のいていく感覚。

とても気持ちがよくて、ゆりかごに揺られているような気分になった。

どれくらい経ったんだろう?

「ヨウ」

遠くで琉の声が響いてる。

ゆっくりと目を開けた。

まだ私の顔の横には琉の胸があった。

それだけで安心して泣きそうになる。

「眠たかったんだね。まだ寝かせてあげたかったけど、このまま寝たら風邪ひきそうだから。そろそろお昼も食べに行きたいし」

え?

私どれくらい寝てたんだろう。

時計に目をやると、既に1時間ほどが経過していた。

琉は、1時間も私に胸を貸してくれてたの?

何も言わず寝かせてくれてたんだ。

こんなにも優しく受けとめてくれる人に出会ったのも初めてだ。

「ヨウ?どうした?泣いてるの?」

琉の顔が私の顔をのぞき込んだ。

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