君の思いに届くまで
とりあえず急ぎではなかったけれど、教務でコピーを済ませ琉と待ち合わせている駐車場に向かう。

途中正木さんに呼び止められた。

「ヨウ!もう帰るの?早退?」

時計に目をやると、確かにまだ2時半を回ったところだった。

なんとなく峰岸教授の買い物の付き添いなんて言うのも気が引けて適当に笑いながら手を振った。

「ちょっとちょっと!」

正木さんは慌てている私に気付いてるのかいないのか、私の方へ走り寄ってきた。

そして、ぐっと私の腕を自分に引き寄せると言った。

「で、どうなの?イケメン峰岸教授は?」

もう、急いでるんだってば!

と、心の中で叫びながらもいつもお世話になってる正木さんを軽くあしらうことはできない。

「え?ああ、うん。がんばってるんじゃないですか?」

「そうじゃなくってぇ。イケメンのそばにずっといててどんな感じ?っていうことを知りたいの!うちの部屋の女学生達も峰岸教授の話ばっかしてるわよ。いつも2人きりで部屋にいれるヨウのこと、うらやましがられてたわよ」

「ほんと、女子学生しょっちゅううちの部屋に出入りして落ち着いて仕事もできないったら。注意しといて下さいね」

「なにそれー。そんなこと言ってるの女子学生達に聞かれたら恐いわよー。女子達ほど集団になると恐い者はないんだから!」

「私達も女子ですけどねぇ」

私は笑いながら正木さんの肩をポンポンと叩いた。

「その話はまた今度ゆっくり!お先に失礼しまぁす」

眉間に皺を寄せている正木さんを置いて、私はその場を走り去った。

しょうがないわよね。

だって、教授を待たせちゃ悪いもの。






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