君の思いに届くまで
駐車場につくと、すぐに琉の姿が目に飛び込んできた。

自分の車に持たれてスマホを見てる。

誰かとメールしてるんだろうか、なんて気になりだしたら止まらなくなりそうだったからすぐにそんな自分の気持ちをシャットアウトした。

「すみません、遅くなって」

琉がスマホから顔を上げた。

「いや、いいんだ。俺が勝手に誘ったんだから」

優しく微笑む琉にドキッとして思わずうつむいた。

「乗って」

そう言って助手席の扉を開けてくれた。

「いいんですか?」

助手席って、特別な席のイメージがあるから今の私が乗るのは少し気がひけた。

以前の2人だったら当然のように乗ってたんだろうけど。

「いいよ。どうして?」

琉は首を傾げて不思議そうな顔をした。

あんまり関係ないんだ、琉って人は。

そんな琉が少し笑えて心が和んだ。

「じゃ、おじゃまします」

私は琉が開けてくれていた扉から助手席に滑り込んだ。

車は以前の車とは違うけれど、やっぱり革張りで大きくていい匂いがした。

車がゆっくりと校内を抜けて行く。

琉のファンの女子学生達が見たらどう思うかな。

正木さんが言ってたけど、女子学生達は侮れない。

思わず首をすくめて助手席に深く座り直した。
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