君の思いに届くまで
「どこへ行くんですか?」

「ん」

琉は短く呟くように言ってから少し笑った。

信号が赤になり車は停車する。

琉は私の方に視線を向けて言った。

「どこへでも。ヨウの行きたいところはどこ?」

「え?今からプレゼント買いにいくんじゃ?」

「そうとでも言わないと、こうやって2人で出かけられないだろう?」

ど、どういうこと?

車は再び発進した。

琉の端正な横顔を見つめながら、あの時みたいにドキドキしていた。

これ以上、私を翻弄させないで。

そう祈るような気持ちで。

「俺がどうして一部の記憶が飛んでるかって話、途中だっただろ?新学期が始まってからは俺もヨウも忙しくてなかなかゆっくり話しもできなかったからね。今日はそのために誘ってみたんだ」

なぁんだ。

やっぱりね。

琉にとっては、ただそれだけの気持ちで私を誘ったんだ。

自分の話を聞いてほしいだけ。

私と2人きりで会いたかったわけじゃない。

窓の外に目をやった。

平日の昼過ぎだからか、若いお母さんらしき何人かが買い物バッグを持って無表情のまま気忙しく歩いている。

私もきっと端からみたらあんな風に無表情になってるんだろう。

頬の筋肉を少し緩めてみた。

琉が続けた。

「あと、どうしてもヨウに渡したいものがあったから」

「渡したいもの?」

「ああ、それを一緒に選びたいなと思って」

「私にプレゼント下さるんですか?」

「うん、いつもお世話になってるし。これからも多分お世話になるだろうから」

「そんなこと、気にしないで下さい。私は単に仕事でやってるだけだから」

と言いながら、仕事でやってるなんて、琉に対しては思ったことがなかった。
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