君の思いに届くまで
でも、こんな私のためを連れ出してくれた琉の気持ちは私に少しの希望を与えてくれた。

少なくとも、今の私の事、嫌いじゃないって。

これから、記憶を失ってしまった琉の事実を聞く。

まだ、私には心の準備ができていないような気がする。

大丈夫だろうか?

琉は、お茶でも?とおしゃれな門構えのカフェの前に車を停めた。

カフェ好きなのは変わらないんだ。

その横顔を盗み見ながら嬉しくなった。

向かい合って座る。

あの時みたいに。

「日本の水で煎れた紅茶もなかなか味わい深い。やっぱり俺も日本の血が流れてるのかなって思ったよ」

「カフェにはよく行かれるんですか?」

「そうだね。1人でゆっくり何かを考えたい時も行く。誰かとゆっくり話したい時もね」

琉は少しはにかんで笑った。

正面でそんな顔されたら、私はどういう表情を作ればいいのか迷ってしまう。

しばらくドキドキして、琉の顔が見れなかった。

運ばれてきた紅茶をゆっくりと飲む。

湯気が丁度いい感じで琉の顔を隠してくれた。

一緒に頼んだスコーンを手にとって食べていると琉が落ち着いたトーンで話し始めた。

「ヨウが、俺のいつを知ってるのかわからないけれど、3年前事故に遭ったんだ」

事故?
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