セルロイド・ラヴァ‘S
私は目を見開き呆然と羽鳥さんを見返していた。足が止まり、手を繋いだまま半歩先にいた彼がゆっくりとこっちに近付く。

「・・・まあ二番手だけどな。自覚ぐらいしとけよ?」

そのまま唇が重なった。一瞬、反応が遅れて。躰を離そうとしたけれど、鞄を持った方の腕が腰に回されて更にキスが深くなる。口の中で追いかけられる舌。段々と抵抗できなくなって捕まる。逃げてるのか応えてるのかも自分で分からなくなって。やっと離された時には息が上がっていた。

「好きなんだよお前が」

抱き寄せられて真剣な声が頭の上で聴こえた。

「だからさっさとあの彼氏に見切りつけて俺にしろよ。・・・そのぐらいは待つから」

すぐには何も言えなかった。もうそれが答えだって分かってしまった。俺を好きだって言う羽鳥さんが正解だって。けれど。

「・・・・・・待っても・・・無駄ですよ」

彼の胸元に項垂れて、力の無い声で私は弱弱しくそう言った。

「・・・お前のそういうとこも好きだな」

切なさが滲んだ苦笑いの・・・気配。抱く腕に最後、力が籠った。



愁一さんのお店が見えて来る手前で、ここまででいいと、頑なに首を横に振り。送ってくれた羽鳥さんを引き返させた。

『また誘うから。嫌なら断れよ?』

しっかりとした笑いを見せて何も変わらない顔で。私の頭をぽんぽんと撫でると、羽鳥さんは背を向け手を振った。



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