バレンタイン・プレゼント
如月さんが社内でも強い発言力を持っている石本専務を支持していることは、入社以来ずっと庶務課にいる私でも、9年も同じ会社に勤めていれば、社内事情のことも含めて噂を聞かなくても知っていた。
それだけじゃなくて、如月さんのお父様が、石本専務が営業部長だった頃から交流があったこと。
だから如月さんは、あずま興産に入社する前から石本専務のことを知っていて、家族ぐるみでおつき合いをしていることや、如月さんは石本専務に見込まれて、あずま興産に入社したことも、私は知っている。
これらは全て、如月さん本人と、ご両親から聞いたことだから。

それにあの日・・愛し合ったイブの夜が明けた朝、如月さんは誰かと電話で話をしていた。
会話の内容は知らない。だけど最後に「ごめんな、エリちゃん」と、彼が言った言葉だけが聞こえてきた。

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