バレンタイン・プレゼント
「か、かすみ、って・・」
「おまえのことだけど」

口を「あ」とか「う」とか「お」と開いてパクパクさせるだけの私に、如月さんは包容力をふんだんにたたえた笑みを浮かべながら、私の二の腕にそっと手を添えた。

そして如月さんは、自分の右手だけを、そっと私の手の方へ滑り降ろしながら、私の左手を握って・・・。

いつの間にか手に持っていた指輪を、私の薬指にそっとはめてくれた。

「霧野かすみさん。俺と結婚してください」

< 57 / 67 >

この作品をシェア

pagetop