イミテーションラブ
田崎は私をちゃんと好きでいてくれてることに安堵し、代わりに疑問が生まれた。
「じゃあ、なんで同じ部署の女の人に好きとか、結婚したいとか言うの…?」
私の質問に一瞬意味が分からない様子だった
田崎はすぐにピンと来たのか、
「何で知ってるんだ?」と私に言って、私もあの日に偶然聞いてしまった事を話した。
「…だったら声かけて欲しかったな」
「でも私、部外者だし」
「同じ会社の同期なんだから、部外者じゃないだろ?」
「そうだけど」
「…まあ、何でそう言ったのか知りたかったら明日の金曜の仕事が終わってから、俺のフロアによってけば?」
そう言って田崎は、私の気持ちを見透かしているのか、ハッキリとした返事をせずに上手くはぐらかす。
田崎の指先が私の頰に触れ、ゆっくりとその顔が近づいてきた。
これ以上は話しても無駄らしい。
田崎は私を深い底なし沼へと誘うように、今までよりも執拗に絡め取って行く。

…ただ、何だか今日は
いつもよりキスが多かった気がした

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