【桃・超短編】「ありがとう」
たまにはバスにでも乗ろうか?
めげてた。

「この程度のレベルに当社がオファーすると思ったのか」みくびるなと……
会社の取引先の高橋様の信頼を保つどころか、お怒りを頂いてしまったからだ。

加えて、その日の社室の最終戸締りが私だった。最後の一人がセクハラで嫌われてる松本だったのでビクビクしながら仕事のミスをリカバーしていた。
「お前なぁ、少しは光熱費を節約しろ。給料からカットするぞ」と、帰りに飲まないかの誘いを、まだまだある仕事で断ると陰湿にいじられた。

泣き面に蜂とは、こういう事なのだろう。

一人で涙ながら作業をコツコツ行った。

そのうち最終のバスがあるので、そろそろときりあげる。

寒い冬の風だった。
身にしみる痛み



最終バスを待っていた。

ぷしゅーとドアの開閉音がして、バスの車内の暖気に、ふっと力を抜いた。客は私だけだった。

「お客さん、何処まで」乗るのかと運転手が聞いてきた。

何処かで聞いたことのある声だったので、気になったので運転手名プレートを見てみた。

「中尾君」
同級生のしかも片想いをしてた彼だった。
私の声に驚き、停車して私に振り返った彼が学生の時より大人びて、やはりくらりとした。

あっ「高校の時一緒だったけ」と爽やかに声をかけ見つめてくれた。

「あんまり遅くまで仕事するなよ」危ない目にあうかもしれないから。

心配げに声をかけてくれた事で更に涙腺にきた。

楽しかった片想い生活を 想いだし、笑い話調に言ってみた。
「私さ、中尾君の事、実は好きだったんだ(照)」

ふかそうかとしていたアクセルを止めたまま、彼は驚きながら答えた。
「意外だけど」
嬉しいと……



そんなやりとりをしてたら、もうじきバレンタインデーなのを想いだした。



(了)
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