素直になれない、金曜日



「……なんで泣いてるの」



砂川くんが困ったように笑って、私も涙目のままつられて笑った。



「幸せすぎて、だよ」



そう言うと、砂川くんがいたずらっぽく口角をあげた。



「……まだ早いよ」

「え?」



戸惑いながら首を傾げた私の額に砂川くんはこつん、と自分のそれを軽くぶつけた。



「俺と付き合ってください」

「……!」



今度こそ、ぼろぼろと勢いよく涙が零れた。

好きな人と、気持ちが通じるってこんなに幸せで、こんなに胸が苦しくなるくらいいっぱいになるんだ。


言葉にならなくて、首をただ上下に何回も動かす。




「……これからも、よろしくね」

「こちらこそ」




これからいろんなことがあると思う。



楽しいことばっかりじゃなくて、喧嘩したり、思うようにいかなくて涙することもあるかもしれない。


だけど、その度に素直な気持ちをぶつけて
私たちなりに答えを見つけていこうね。



たとえ、どんな未来が訪れたとしても、きっと後悔はしないよ。





きみのことを好きになったこと。

人生に一度の初恋をきみに捧げたこと。





< 292 / 311 >

この作品をシェア

pagetop