包み愛~あなたの胸で眠らせて~
「そうだよね。私ももちろん会いたかったけど、子供だった私たちが会うのは難しいことだったものね」


私の母と広海くんのお母さんは仲が良かった。だけど、広海くんの家が引っ越してしまってからは母も全然連絡を取っていないと言っていた。

いつか連絡がくればいいけどと母は言っていたけど、いつかは今になってもない。

広海くんでさえも会っていないというのだから、母に連絡が来ないのも頷けてしまう。

だから、私たちが会うのは困難なことだった。

こうしてまた出逢えて、焼き肉を食べれていることは奇跡なのかもしれない。


「紗世はアメリカのどこに留学したの?」

「ロスアンゼルスなの。だから、広海くんがアメリカにまだいたとしても会える確率は低かったよね」

「そうだね。ニューヨークからだと遠いな。一年留学していたなら、紗世も話せるよね?」

「あー、うん。でも、帰国してから話す機会もないから、もうそんなには話せないよ。広海くんみたいに長く住んでいたら日常会話なんて簡単に出てくるだろうけど、私はもう無理」
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