包み愛~あなたの胸で眠らせて~
明日の夕方までに仕上げればよい案件だったから今日中に広海くんが聴いて訳し、明日まとめれば明日の午前中には終わる予定になっていた。

都合により早まったことは知っていたが、なぜ私一人でやっているのかまではさすがに知らなく、その理由を話すと広海くんも星野さんと同じように怒る。彼が怒ったのは初めて見た。


「一人でやれって? 何だよ、それ。どういうつもりで言っているんだか」


私が苦笑して頷くと隣に座って、自分のノートパソコンを開く。何でわざわざパソコンを持ってきたのかと首を傾げる。

広海くんは私のパソコン画面を覗き込んで、自分のを操作する。


「高橋さんの嫌な予感は当たっていたな。俺もやる。紗世はこのまま続けて聴いたのを入力していって。俺は追って訳していくから」

「うん、ありがとう」
 

一時停止していたICレコーダーを動かす。広海くんは開いたワードに私が入力した英文を見ながら、その訳を入力していく。広海くんの訳すスピードは速く、すぐに追い付いた。追い付いた場所からは、二人で聴きながら進めていった。
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