包み愛~あなたの胸で眠らせて~
一度だけのデートならば、深く考えることではないだろうけど、そういうニュアンスのお誘いには聞こえなかった。

正直、今私が気にかけている人は堀田くんではない。明るく元気でいい人だけど、恋愛対象にはならない人。

だったら、昨日すぐに断ればよかったと今は後悔している。突然のことに半分期待させるような返事をしてしまったのはよくなかったはず。

どのタイミングで断ろう……。

そんなことを思いながら、ぼんやりと堀田くんの動きを見ていたら、彼もこちらを向いて目が合う。堀田くんは首を傾げてから、向かってきた。

いけない、何で見ていたんだろう。


「片瀬さん、すみませんが資料作りを手伝ってもらってもいいですか?」

「あ、はい。いいですけど、今ですか?」

「そうですね。10分後、ミーティングルームに来てもらってもいいですか?」

「はい」


来週の会議に使う資料作成を堀田くんは課長から言い渡されていた。各所からの資料を集約して、タイムテーブル等を作成していたようだ。

先輩に聞きながら真面目に取り組んでいる顔は凛々しいなと思っていた。真面目な部分を見たからといって、恋愛に結び付いてはいないけれど。
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