包み愛~あなたの胸で眠らせて~
社内案内を課長から任された高橋さんと一緒にフロアを出て、廊下を歩き始める。

前から一人の男性が歩いてきた。

「あれ、池永(いけなが)くん。朝礼にいなかったよね?」

「総務に行っていたら、時間がかかってしまいました」

「そうなのね。こちら、今日から来てくれた片瀬さんよ」

私は紹介されたその人を見て、目を見開いた。その池永と呼ばれた人も同じような表情で私を見て、動きを止めた。

まさか、昨夜マンションで会った彼がここにいるとは……。

彼もまさか昨日会ったばかりの私がここにいるとは、思わなかったのだろう。

思いがけない偶然に言葉を出せないでいると、高橋さんが私たちの顔を交互に見て、首を傾げる。

「んん? 二人、知り合いかなにか?」

「あ、いえ! 片瀬紗世と申します。よろしくお願いします」

「えっ……。あ、池永広海(ひろみ)です」

小さく驚きの声を発した彼は早口で名乗って、私たちから逃げるように離れていく。

「池永くん、ちょっと無愛想に見えるけど、優しい人だからね。ん? 片瀬さん……片瀬さーん、どうかした?」

「あ、すみません! そうなんですね」
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