私にはあなたでした。
…ピピピピピ…ピピピピピ…ピピピ…プッ、

「…んー…」

いつものように重い瞼を少し開けながら、アラームを止める。

ただいつもと違うとこが1つ、

「…頭が痛い…。」

昨日何があったか覚えていない。

…私…道端で倒れたんだっけ…。

でもどうやって家に帰ってきたかも覚えてない。

そんなことを考えながらベッドの上で
5分くらいぼーっとしていた。

…今何時だろ…。
ゆっくりと携帯の時計を見る。

【 7: 30 】

「っ…、やばい、遅刻だ!」

勢いよくベッドから飛び起き、シャワーを浴びて、準備をする。

「いってきます!」

誰もいない部屋に別れを告げると、
全速力で階段をおりる。

私は12階建てアパートの2階に住んでいる。

住み始めて、もう3年になるから
ここの管理人のおばさん(ちえさん)とは大の仲良しになっていた。

「ちえさん、おはようございます。」
慣れた口調で言うと、ちえさんは

「あら、冬華ちゃん。おはようさん。体調は大丈夫かい?昨日は大変だったねぇ。」

…昨日?…やっぱり私倒れたのかな…。
じゃあどうやって家に帰ってきたんだろう…

「あの…昨日…私どうやって家に……」
そう言いかけたとき、
階段から声がした。

「ちえさん、おはようございます」

私の隣に来て、親しげにちえさんと話し出したその人は、髪の毛は少し癖毛で、スーツをきっちりと着た気前のよさそうな男の人だった。

この人もここにきて長いんだろうか。

それにしてもどっかで見たような…

会社かな?

いや違う。

じゃあよく行くカフェとか…

んー、違う気がする。

じゃあ、どこで……、



「…あっ!」

思い出した。

「…あの………川上くん…だよね…?」

高校時代の同級生、川上 春風(カワカミ シュウ)くんだ。

クラスは一緒になったことがなくて、話したこともなかったけど、
お姉ちゃん同士が仲のいい友達で
顔見知りではあった。

「…あっ……白石さん…?」

お互い大人になったからか、今になって初めて話すからか、心なし気まづそうに見えた。




< 2 / 12 >

この作品をシェア

pagetop