私にはあなたでした。
「そうそう、昨日冬華ちゃんを家まで運んでくれたの春風くんやったねぇ。」

ちえさんの言葉にびっくりした。

「本当ですか…?!」

そう言いながら川上くんを見ると、
一瞬合った目をそらされた。

そりゃそうだよね。
あんな姿見られたら誰でも引くよね。

「川上くん…ごめんね、ありがとう。」

少し私も気まづくなって
目を合わせることができなかった。

「いや…全然…。」

そう言うと川上くんは頭をかきながら、

「俺の方こそ…彼氏がいるのに勝手に部屋に入ってごめん…。」

…彼氏?
彼氏なんていないけど…。

「私ずっと彼氏なんかいないよ?」

不思議に思って聞き返すと、

「あれ?そうなの?じゃあ昨日のあれは…」

昨日のあれ?

「昨日のあれって?」

昨日のことを覚えてない分、
ますます不思議だ。

「いやっ、なっ、なんでもない!」

苦笑いで答える川上くんは
何か隠してるみたいだった。

それをニコニコ見ていたちえさんは
ふと何か気づいたように

「あっ、冬華ちゃん。会社の時間大丈夫かい?」

そう言われ、腕時計を見ると

【 8:30 】

「…忘れてた!遅刻する!」

ついつい長話をしてしまって
遅刻するところだった…。

ちえさんにお礼を言って、
アパートを出ようとした時川上くんに右手を掴まれ止められた。

「…何かあったらなんでも言えよ?」

なんでそんなことを言ったのか
その時の私には分からなかった。

「…ありがとう…?」

それだけ言って、私はいそいで会社に向かい
アパートをあとにした。







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