お前からは、いらないから
チャンス到来です!
今日は2月14日。
だから一応用意してきた。
渡すチャンスがあったら。
いつも気になってるあの人に。

総務の仕事は私には少し荷が重い。
時々失敗、落ち込んだりもする。
私、なんか持ってるんだと思うわ。今日だって、コピーしてうっかり原本置き忘れちゃった。普通なら後からきた誰かが横に避けといたりしてくれるものだけど。ご丁寧にビリビリに破かれてイン・ザ・ゴミ箱。
しかもそれはイヤミな課長から頼まれたもの。仕方なく報告。めちゃ不機嫌でネチネチやられた。

はあ…と心の中でため息を吐きつつ、席に戻る途中、
「お、富田、悪りぃ」
相沢先輩に呼び止められた。
眼鏡が似合うイケメン。お肌ツルツル。颯爽、敏腕営業マン。
だけど結構口が悪い。なのに目が離せなくなる。狙ってる女子社員多数。

「やったな」
ニヤリとする。
聴こえてたか…私はへへ、と笑って誤魔化す。こー見えてもかなり凹んでるんだけど。
「エイビー商会に納期確認しといてくれ。俺、これから得意先行くから」
「はい、分かりました」
「課長さ、部長に叱責されて機嫌悪りぃんだよ」
ニコッと笑い、スーツの長身を翻して部屋を出て行った。

相沢先輩は定時を過ぎても帰社しなかった。連絡もない。
エイビー商会からの回答を口頭で伝えたかったから、残業して先輩を待っていた。
社内は静まり返ってる。
もう7時だ。キリがない。メモを残して帰ろ…

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