不器用な殉愛
 受け入れの準備を終えると、修道女達がやってきた。山のように荷物を積んだ荷馬車とともに。

「アメリア、ジョゼ、元気にしてた?」

「おかげさまで」

 ルディガーの指示は、修道院の方にもとんでいたようだ。修道女達は、迷うことなく「アメリアとジョゼ」として二人を扱ってくれた。

 見習い修道女としてふるまう以上、髪はきっちりと束ね、化粧もしない。身を飾る装身具もすべて外す。身を包むのは上質の布地ではなく、粗末な品だけれど、それでもほっとした。

 自分が、自分でいることに、疲れていたのかもしれないということに気づいてまた動揺する。

「……あなた達は、敷布をお願い。私達は、もう運び込まれている患者の手伝いに回るから」

「はい」

 ジゼルともう一人の修道女と協力して、床に敷いた敷布団にシーツを重ねる。それから、毛布と枕を一つ一つの寝床に用意していった。

 それだけでもけっこうな数だったのだが、午後には早くも患者が集まり始めていた。ルディガーに呼ばれた医師達が治療にあたり、ここに入院する必要があると判断された患者は、端から寝床に運び込まれていく。

「厨房に食事の用意ができているから、行ってらっしゃい」

 そう声をかけてもらえたのは、午後も半ばになってからだった。ジゼルともう一人と厨房に駆け込み、立ったまま食事をとる。

「……懐かしい気がするわね」

 硬いパンをスープに浸し、柔らかくして食べながらディアヌは笑った。こうやって、駆け回っている方が自分らしいというか。
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