不器用な殉愛
「私の、勝手な願いです。父の犯した罪に対する罪滅ぼし、とでもいえばいいでしょうか。たとえ、人の記憶に残らなくても——私が、そうしたいと思ったんです。だって、私の名前は、国と家族を売った最悪の王妃として歴史に記されることになるから」
明日からは、見習い修道のアメリアとして働くことになる。何かしないではいられないという感情を、どうしてルディガーはこうも的確にくみ取ってくれるのだろうと思えば、感謝の念しかわいてこない。
ノエルのぶしつけな質問でさえも、もう、どうでもよかった。それよりも、何かできることがある。それが嬉しい。
「当面は、あなたの力も借りることになりますね。どうぞ、よろしくお願いします」
「あ、いや……そういうわけでも。自分は、陛下とあなたの婚姻には、今でも——あまりいい感情はありません」
「率直なのが、あなたのいいところだと思います。その方が、私も気が楽ですから」
「ディアヌ様、この男にそんな気を使う必要はないでしょうに」
「そんな風に言わないで。この方は、私に……いえ、なんでもないわ。さあ、それより、ラマティーヌ修道院の皆を迎える準備をしましょう。ノエル、修道院の皆の分の寝具をお願いできますか」
かしこまりました、と一礼してノエルが去る。
生きる理由が、もらえた。それだけで十分だとジゼルの前でも言えなかった。