不器用な殉愛
「ノエルは、反対しているがな」
「反対する理由もありますからね——あの方の血が、前王のものでさえなければ、祝福してくれた人も多いでしょうに」
「——だが、ディアヌの味方も増えてはいるだろう。まだ、増やす。あいつが、安心してここにとどまらなければ意味がないんだ」
「昔なら、私も反対したでしょうね。ただ——あなたが、ディアヌ様を心から得たいと思っているのもわかるから、もう何も言いませんけれども」
いつの間にか、ジゼルはルディガーの味方となってくれたようだ。なぜ、彼を見直すつもりになったのかはさっぱりわからないが。
「——ジゼル、話が終わったのなら、変わってもらっていいか。俺も、ルディガー様と話をしなければならないことがある」
室内に入ってきたノエルが、ルディガーの方に困ったような表情を見せた。
「ルフェーベル家の縁者が反乱を起こした。誰かを鎮圧にやらないと」
「俺が行こう。ルフェーベル家そのものをこの世から消滅させたいわけじゃない。マクシムのように民を虐げるのならばともかく、他の者達とは、話をすれば分かり合える機会もあるだろう」
「その前に、徹底的に叩きのめす、と」
「それは——当然だな。反乱なんぞ起こされては困る」
まだそこにいたジゼルの方に、ルディガーは笑みを向ける。
「そういうわけだ。ディアヌを頼むぞ」
ディアヌのことは、ジゼルが気を配ってくれるから安心だ。