不器用な殉愛
「わかった。すぐに手配する——というか、始末をすればいいか」

 ジゼルの言葉を聞いたルディガーは、あっという間に結論を出した。

「始末って……『消す』ということですか、陛下?」

「まさか。そんな後味の悪いことをディアヌが許容するはずもないだろう。ノエルの父のもとに送る。仕事が、必要なんだろう? ま、本当はそんなやつ消してしまってもかまわないんだが」

 いずれ、見習い修道女アメリアと王妃ディアヌが同一人物であるということは、公にするつもりでいる。そのためにも、実はアメリアは高貴な身分の娘だという噂は適当にばらまくようにしてあった。

「それなら、よいのですけれど」

 ため息をつくジゼルは、ルディガーが気づかないうちに大人の女性へと変化していた。年頃にも関わらず、紅一つひいいたことのない唇を不満そうにゆがめる。

 あの頃、十六だったルディガーが、もう二十六——もう二十七になろうとしているのだから、ジゼルが大人になるのも当然だ。

 普通ならとっくの昔に嫁いで子供の一人や二人いてもおかしくない年齢だ。だが、彼女は、主の側を離れようとしない。その理由も以前聞いたからわかってはいる。

「大丈夫だ。約束の期限までにはすべてを片付ける」

 ジゼルの目を見つめて、もう一度誓う。彼女の目が不安そうに揺れたけれど、今、その不安を口にするのは避けたようだった。
< 141 / 183 >

この作品をシェア

pagetop