不器用な殉愛

「それについては、葬儀が終わるまで待ってほしい。葬儀が終わった後ならば、返してやれるかもしれん」

 その言葉に、ジゼルは驚いたように目を瞬かせた。剣を返してもらえるとは思っていなかったのだろうか。

「他の者に警護をまかせるよりいいだろう。不満か?」

「いいえ、返してもらえるとありがたいわ……ありがたい、です」

 ジゼルの方も、言葉遣いを改める努力はする気になったようだ。話を終えてノエルが出ていく。

「……ディアヌ様、残された時間はさほど多くありません。道具をお持ちしますので——穴を」

「そうね」

 そのために動きやすい服を選んだのだ。ノエルがつけたのであろう兵士達に見守られながら、二人を葬るための穴を掘る。

 いくら修道院生活をしていて肉体労働に慣れているとはいっても、それはきつい作業だった。

「誰か、手を貸してくれてもよかったでしょうに」

「そんなことを言ってもしかたないわ——葬る許可をいただけただけ、ありがたいと思わなくては」

 もし、ルディガーがその気になったなら、父と異母兄の遺体を野に捨て、そのまま朽ちておくままにすることもできた。

 だが、司祭の手による葬儀は行われなくとも——少なくとも、人目につかないところに埋める許可だけは与えられた。それだけでもありがたいと思わなくては。

「お母様とお異父姉様のお墓参りにも行きたいわ。あとで、許可をもらえるか聞いてみてくれる?」

「かしこまりました」

 母とトレドリオ王の間に生まれた異母姉の墓は、城内の奥まったところにある。そこに行くのでさえも、今のディアヌは許可を必要としていた。
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