不器用な殉愛
 ◇ ◇ ◇

 

 ルディガーのところに会いたいという娘がやってきたと聞かされたのは、あと数日のうちにはシュールリトン城に乗り込もうとしている時だった。

 赤毛の傭兵ルディックではなく、セヴラン王国復興を目指す若き王ルディガーとして動き始めてから二年。

 その間、ディアヌについての噂は、しばしば耳に入ってきた。新しく迎えられた姫君は、自分に与えられた部屋から出てくることはめったにない。たまに出てきた時には、傷ついた兵士達の包帯を巻き替えたり、薬を与えたりと医師の助手として手を貸しているようだ。

 非常に美しいという話は聞くものの、それ以上のことはわからない。

 城の守りを固めている兵士達の指揮をとっている者が有能なのか、ルディガーも何度か攻めたものの決定打を得ることはできていなかった。

 ルディガーに協力すると言っていたヒューゲル侯爵が、城に入ったことは確認できているというのに。

 最初からあてにはしていなかったから、彼からの使者が来ていないのはどうでもいいのだが——。

 実の証を立てる手段として、娘が使いに持たせた腕輪には、シュールリトン王家の紋章が記されていた。今現在、シュールリトン王家の紋章を身に着けることを許される若い娘と言えば一人だけだ。

「——会う」

 もし、ディアヌが来ているのだとすれば、会わないわけにはいかないと思った。何を考えて、彼女がここまで来たのかわからない。城を抜け出し、敵陣に来るのがどれだけ危険なことか。
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