不埒な先生のいびつな溺愛
「あるよ。私も共犯だもん」

そう答えると、久遠くんは固まってしまったけれど、耳は赤く染まったままだった。
こんな風に照れているときの久遠くんは、口が悪くたって怖くない。むしろ可愛いとさえ思った。

久遠くんには絶対に秘密だ。

「そうだ久遠くん。『屈折』は読み終わったんでしょ?どうだった?」

話題を変えると、彼は持っていた『屈折』を私の手に返した。

「タイトルのわりに全然屈折が足りてねえ。人間はもっとへし曲がってる」

「ふふ、なにそれ」

面白くて私はまた笑ったが、久遠くんは真顔のままだった。

内容の伝わってこない彼の感想は全く参考にはならないけれど、私は自分が読むときは、彼はどんなところに屈折が足りないと感じたのか、きっと胸をワクワクさせながら読めるに違いなかった。

話をしながらもしっかりとお弁当を食べ終えて、私は先に空の弁当箱を包んで手提げに仕舞った。

持ってきて机のすみに置いていたファイルの中から、『数学』という表紙のプリントを数枚取り出した。

「英語じゃねえんだな、今日は」

久遠くんは珍しく、私の勉強について口を挟んだ。

「うん。ずっと逃げてたんだけど、校内模試の数学が酷すぎたから、復習しなくちゃ」

第一志望の大学だけは数学を使うため、私はこの教科を捨てるに捨てられないのだが、苦手意識があるため数学に取りかかることは大きなストレスとなっていた。

久遠くんは黙って、問題を解き直している私の手元をじっと見ている。
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