不埒な先生のいびつな溺愛
先生のお父さんが亡くなった日から五日が過ぎて、この日は告別式となる。
昨日のお通夜の時間も、私のスケジュールは空いているのに参列をすることはできないため、私は先生がどうしているかばかり気になっていた。
告別式である今日はよけいに、先生の悲しげな顔を思い出し、胸が痛くなる。
仕事中でも、仕事なんて全く手につかない。
他の作家さんに会っても、「久遠先生は大丈夫?」「秋原さんはそばにいなくていいの?」と言われてしまい、どうして私は今日、久遠先生に会えずに仕事をしなければならないのかと悔しくなった。
告別式、火葬、そして当日に行うとのことだった初七日法要を終えたころを見計らって、私は坂部さんに電話をかけた。
「すみません坂部さん、東雲出版の秋原です。あの、この度は……」
『あら秋原さん、おかげさまで、こちらは無事に告別式まで終りまして……。隆之くんも、もうすぐ法要から戻ると思うんですけど』
「そうですか。坂部さんも、大変でしたね……。明日、うちの編集部がご焼香にお伺いしようと思っておりまして、先生のご在宅だけ確認しようかと思ったのですが」
『明日ですか?私のほうはちょっと、これから家に戻って、明日まで用事があるものですから……。でも隆之くんなら、明日もここにいるはずですよ』
「そう、ですか。そうですよね、坂部さんにもご家庭があるのに、本当に今回は先生に付きっきりで……」
坂部さんは電話の向こうで苦笑いをしていた。
『こんなときは助け合わないといけないですから。隆之くんは顔には出さないけど、辛そうです。秋原さんも、会社が大変かもしれませんが、様子を見に来てあげて下さると、元気が出ると思いますよ』
「……はい」
電話はそれで切れてしまった。