不埒な先生のいびつな溺愛
彼と彼女の一年間
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────高校三年、春のこと。

私、秋原美和子は文系の特進クラスにかろうじて入ることができた。

この学校は抜きん出た進学校というわけではないけれど、有名大学を狙える範囲内の学生たちのみ、特進クラスへと集められる。

私は本が好きで、将来も本に関わる仕事に就きたいと思っていた。志望の学部も自然と文学部に決まっていて、大学も文学部が有名な大学ばかりが目に留まった。

「秋原、今のままでは、難しいよ」

進路指導の先生に言われたことが、この数日ずっと引っ掛かっていた。

「文学部にこだわらなければ、秋原ならもっと上の大学も目指せるんだけど」

「いえ、私は文学部がいいです」

先生はつまらなそうに口をつぐんで、「そう、じゃあ頑張ってね」と話を切り上げた。

特進クラスは息苦しかった。

細切れに行われる進路指導は、いつも自分の望む言葉をもらえない。クラスメイトはめきめきと実力を伸ばしているのに、自分だけが足踏みをしているようだった。

大好きな本を読む時間がなくなったのも、このストレスの原因だった。

私にとって、本を読むことは、漫画を読むことと同じだ。本を読むことを「偉い」なんて言う人もいるけれど、私にとっては完全な娯楽なのだ。

受験生になってからは、本を読んでしまうと、罪悪感に苛まれるようになった。
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