甘い毒
甘い毒
最上階のスイートルーム、そこに毎月の様に一週間づつ滞在し私を呼びつける男がいる。

「私はコンシェルジュであってルームサービス係ではありません」
「お前の様な出来損ないの三流が良く言うよ」

上から目線のこの男、有名企業の若社長だが口は悪いし女癖も悪い。

顔の良さと財産に釣られた女達が、一週間の内で何回入れ替わるのか数知れないとの噂だ。

「ところで注文しておいたワインに間違えないか?今日は特別な女が来ると伝えといたはずだが…」
「仰せの通りにグラスも2つお持ちしましたが…何か問題でも?」

一礼をし、この場を去ろうとした私の事を壁際に追いやり上から見下ろす。

上目遣いで睨みつけても逆効果の様で、結果的にこの男を煽っただけだった。

「…チョコフォンデュなんて頼んでないけど?」

あと数センチで、唇と唇が触れそうな距離で問われる。

強気な瞳で睨みつけていた私だったが、この至近距離には耐えられずに目を逸らした。
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