わたしのキャラメル王子様
「あーあ。なんで伝わらないのかなぁ?俺はこんなに沙羅のことが好きなのに。片想いはしんどいんだよ?それにもう飽きた!」



「はいはい、そうですか」



無表情を装って受け流した。だってこんなのにいちいち反応してたら心臓がもたないよ。
ちらりと悠君を見たら露骨にへそを曲げた顔をしてる。



小さい頃は頭をよしよししてあげると機嫌も直ってたよね。



でもそれは昔のこと。
今じゃ背伸びしたって頭のてっぺんに手なんか届きそうにない。



悠君がふくれて立ち尽くしてるのがわかったけど、私は彼を置いてどんどん先を歩いた。
それがいけなかったんだろうか。
女の子の震えた声が後ろから聞こえて、足が止まった。


「……あの、これ、受け取ってくだい!」



汗がじわりと額に浮く。
もしかしてこれって。
まさか。



「これ俺にくれるの?ありがとう」



思わず振り向くと、ニコニコで受け取っちゃってるし!



「返事……ください」



朝から告られてます。それもなかなかの美少女に。



「返事?……もしかしてこれは恋文……!」



悠君は小声で、しかもヘンテコな日本語になった。
テンパるとたまにこうなる。
てか、ラブレター以外あり得ないでしょ。



私は足早に学校へ向かった。
それは自然と小走りになった。



だって見たくない!
知りたくないんだもん。先の展開!
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