わたしのキャラメル王子様
「……そう。ラブレター、です」



その場を立ち去ったはずなのに、女の子の消え入りそうな声がまだ耳に届く。



やだやだやだ。
こういう場面に遭遇したくなかった。



悠君がその子と話してるのがわかったけど、早歩きでとにかく逃げた。
耳を塞いで、見なかったことにしようとした。



それなのに動悸が打って、汗がこめかみを滑る。
やだもう、メイクが台無し。



「沙羅おはよっ。何急いでんの?」



顔を上げたら親友の京(きょう)ちゃんが、キレイな髪を揺らして笑ってた。汗なんかかいてない涼しげな顔で。



「京ちゃん、なんかもう……朝から疲れちゃって」



彼女の顔を見たらホッとして泣きそうになってしまった。



「メイクよれっよれだね、パウダーで押さえてない証拠だ?」



「ちゃんと押さえたもん!」



だけどもうどーしようもなくなっている模様。



「珍しく佐野君いないんだ?この涙目と尋常じゃない汗は、そのことと関係してたりする?」



「ねぇ話聞いてくれる?涼しい教室で!」



「涼しい教室で?」



「そう、そこ大事」



だって冷や汗だか脂汗だかが普通じゃない。それくらい私は動揺していた。
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