わたしのキャラメル王子様
悠君の話なんかちっとも聞いてなかったんだと、かなり反省。素直になれない私が遠距離恋愛なんてものを続けられたのは、相手が悠君だったからなんだね。
「……寝ちゃってごめんね」
「別にそんなの気にしたことないけど。沙羅の寝顔好きだし」
面と向かってのあまあま攻撃は刺激が強すぎる。遠距離くらいがちょうどいいのかもしれない。
あと私、現実のイケメンに対する免疫力が落ちてる気がする!
「髪伸ばしてたんだ?」
「あっ、うん。はい」
なんだこのつたない返し。幼児?
あっそうか。
一緒に勉強するときは、気合い入れのために髪をてっぺんで巻いてたから気づかなかったんだ。
「そう、伸ばしてたの」
だって悠君、私の髪が好きって言ってもんね?
って素直に言えたら可愛いのに、この期に及んでもやっぱり言えない。
だって恥ずかしすぎる……。
ほてったほっぺたを隠そうと顔を背けたら、寝起きでぼさぼさの髪にふわりと悠君の指が触れた。
「沙羅にやっと届いた。ちゃんとこっち向いて?」
こわごわ振り向いたら目の前に悠君がいた。
ほんとにほんとの悠君がいる。
自分の胸が高鳴る音がした。
「やっと会えたね」
「うん、やっとだ」
導かれるみたいに、悠君に手を伸ばした。
「もう離れるの禁止にしよっか?」
「……うん」
ふわりと抱きしめられて、ふぬけになる。
声も体温も匂いも……目の前にいるのはまぎれもなく悠君だ。
あんなに意地悪だった時差や距離を、こんなにもあっさり埋めちゃうんだ彼は。
「すっげー会いたかった」
「私も」
悠君の胸に思いっきり抱きついた。
「寝癖まで可愛いとかありえないから」
髪を撫でながらはにかむ笑顔に、手が届いてしまうなんて。
「悠君、ほんとにもうどこにもいかない?」
「行かないし、行ったとしても必ず沙羅のとこに帰ってくるよ」
嬉しすぎて、瞬きもしないで悠君を目に焼き付けた。
「ちゃんと着けててくれたんだね」
胸元のリングをそっと手ですくう。
「当たり前じゃん。お守りだし宝物だもん」
ずっとこれに励まされてきたんだよ、離れている間。
「指につけたら校則違反?」
「わかんないけど、没収されたらやだから」
そう、だからここで大事にあたためてたんだ。それなのに、悠君は私の首からそっとチェーンを外してしまった。
「どうしたの?」
「ふたりのときは、ここにはめてて?」
チェーンからリングを外すと、それを左手の薬指に着けてくれた。
「そっか。うん、だね」
指につけると、ペンダントのときよりもずっとキラキラして見える。
「俺、沙羅をお嫁さんにするから。願いは口にしないと」
「じゃあ私は悠君のお嫁さんになるね」
胸がいっぱいになって、また悠君の胸に飛び込んだ。
「寂しかったぶん、いっぱいかまってくれる?」
「当たり前じゃん。でも受験勉強はスパルタだからね」
「ぜんぜんそれでいい!」
絶対合格する!
今まで以上に勉強頑張る!
そして、悠君にふさわしい女の子に……ううん。大人の女性になるんだ。
「じゃあ、覚悟だけしといて」
「……覚悟って?」
聞き返したら、悠君はあのいたずらな笑顔を見せた。
「もうブレーキかけないから。王子様は想像以上に甘々だから、とろけちゃっても文句言うなってこと!」
*End*


