わたしのキャラメル王子様
「映画って……あぁ、あのとき?」



そうだ。思い返せばこんなこともあった。








「うっううぅ……ちょー感動した」



「えー、まだ泣いてんの?」



「死ぬのはやだけど、あんなふうに想いあってみたい」



「これぞ純愛って感じだったもんね~」



1学期。年に一度「視聴覚学習」という名のいい映画を観る日があるんだけど、そのあと女子のあいだではこんな会話が飛び交っていた。



映画の後半ではすすり泣きが聞こえだして、女子の多数は教室へ戻るときも、その感動の余韻からなかなか抜け出せていないみたいだった。



それは病に冒されながらも、わずかな余命を伸びやかに生きようとする女の子と、彼女の深い悲しみを知ろうともがく男の子のお話だったから。



登場人物みんなの心情が胸に迫ってきて、切なくって、苦しくって、なにもかもに共感せずにはいられなかった。



男子の胸にだってきっと同じように響いてるはず。悠君はどう感じたのかなって、思わず彼の姿を探してしまった。



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