がらくたのハート
「さて、早く奏恋歌を探しにいこうぜ。暗くなっちゃうからさ」
『でも、ここに来るまであったのは毒草くらいでしたけど……』
「お前のメモリーはポンコツか? 湿気が多い場所に咲いてるって言ったろ」
あら、そう言えばそうでした。
「この坑道なら湧き水もあるし、湿気も多いから見つかるかもしれないな」
『そうですね、では行きますか』
ワタシはラズに帽子を返し、湧き水の脇にある横穴へと向かいました。
「おいコラ待てー!」
突然ラズが大声をあげました。
『何ですか、大声を出して』
「オレは怪我してるんだぞ! おぶれ」
『やれやれ、仕方ないですね』
ワタシはラズの体をヒョイと持ち上げ、背中におぶりました。
ラズはもっと優しくしろだの、背中が冷たいだの言ってました。
すると、頭に一滴の水が垂れてきました。
『おや、水が』
「お前のメモリープログラムはどこにあるの?」
『主メモリーは頭ですね。そこから分析と保存の為に胸のサブメモリーに書き込まれて、RZ型の電子マイクロシナプスを通りうんぬんかんぬん。それからY85‐hiトルミナアナリシスで更に解析をして、記憶になってホニャララ。それから――』
「あー……もういいや。取り敢えず頭が壊れると駄目なんだな」
そう言って先程返した帽子をワタシの頭に被せました。
「濡れたらヤバイだろ」
『……ラズは優しいですね』
ラズはワタシの頭をポカンと叩きました。
『何をするんです』
「そう言う事言うな」
『それは“照れ”と言うヤツですね。ワタシは本当にラズは優しいと思いますよ。グスタから猫を助けたじゃないですか』
ラズは溜め息をしました。
「またその話かぁ。帽子取るぞ」
『はい、止めます』
しばらく歩いていると、二又に分かれた道にたどり着きました。