がらくたのハート
ワタシの右腕にはレーダーが着いていて、特定の人物の持ち物や体の一部を……まあ、難しいハナシはいいですね。
レーダーによると、ラズの反応は現在の場所から動いていません。
???
……ああ、なるほど。
いやはや、このレーダーは未熟ながら平面でしか表示しないのです。
ワタシの足元に坑道への穴が開いてます。ここに落ちてしまったのでしょう。
幸いにもあまり深くはないようですが……。
立体的に表示されるように博士に作り直してもらいますかね。
『ラズー? 聞こえますかー?』
しかし、ラズの声は聞こえて来ませんでした。
これは大変だ。
ワタシはすぐにその穴に飛び降りました。4メートル25センチの深さです。
薄暗く、湧き水がチョロチョロと壁から垂れていて、何だかジメジメした場所でした。
ガシャンと地面に足をつけると、ラズが倒れているのを見つけました。
『ラズ、大丈夫ですか?』
体を揺するとラズが目を開けました。
「いたた……」
少し頭と尻を打ったようですが、無事なようです。
『あそこから落ちたんですよ』
ワタシが陽が射す穴を指差します。
「げ、あんなとこから落ちたのか」
尻を擦りながらゆっくりと立ち上がりました。
「痛っ!」
『おやおや、ラズの足からオイル……いや、血が出てますよ』
「擦りむいちゃったな。まあ、あそこから落ちてこの程度で済んでよかったよ」
消毒くらいはしたいのですが、ワタシは持ち合わせていません。
「あ、ねえ、そこの岩に生えてるコケ取って」
コケ?
ラズが指差す方を見ると、岩にみっしりとコケが生えています。
言われた通りにそのコケを剥がし、ラズに渡しました。
「このコケは癒しゴケって言って薬草の一種なんだ。コイツを少し濡らして……」
そばから溢れていた湧き水に少し浸して、掌に乗せて潰すようにこねます。
「こうやって……ほら!」
ラズは癒しゴケを傷口に塗ってハンカチで患部を覆って縛りました。
「これでバイ菌は入らないんだ」
『ラズは博識ですねえ。博士と同じくらい』
「今はこんな治療しなくても薬草膏を貼っておけばいいしな。昔の人はこうやって傷を治してたんだってさ」
花屋と言うのもバカに出来ませんね。