16の、ハネ。
しかし……。
「いーや、ちゃんと質問には答えるぞ」
「え……」
なんで?
私がこの話を切り出した時の君の表情は、君にしては珍しく暗かった。
辛い話なら、無理しなくていいのに。
「音羽になら、話しても、いい」
「私、になら?」
陽人は静かに頷いた。
「それに、そんな難しい話じゃない。単純だよ」
陽人は私に背を向けて、廊下の窓を開ける。
朝の冷たい風が、陽人の髪をなびかせる。
「もう、ついていけなくなったんだ」
あのあと、俺は県内の試合でも敵わなくなってきた。
周りのライバルたちの身長は、どんどん伸びて。
陽人の寂しそうな辛そうなその声は、冬の風に乗って私の耳まで届いた。
「でも俺は、自分の足をハンデだと思ってない」
「え?」
思わず聞き返すと、陽人は「俺はな」と嬉しそうに語りはじめた。
「自分の足も、全部含めて俺だから、人と違うとか違わないとか、気にしたことない」
「たとえ、勝てなくても?」
「ああ、もちろんだ」