この恋を忘れずにはいられないんだろう

彼のシャワーの音を聞きながら、


彼のしっかりとフォルダー分けされたメールを、


あたしは冷静にも、意外な一面だな、と思っていた。



次は彼女へのメールを開く。


『俺も楽しみ。』


『式場何時予約?』


『今週は忙しいから、来週考えよう。』



もう、これ以上見る必要もなかった。



身体中の全ての力が抜ける感覚。


なんの言葉も出てこない。


そっと、携帯を元の画面に戻して置いておく。



『携帯、置いてて見られたらどうするの?』


冗談ぽく聞いたあたしに、


『透子はそんな事しないって分かってるからいい。』




……ね。だから、置いていかなきゃよかったのに。



あたしの家で、今シャワーを浴びてる男と結婚する、彼女を哀れんだ。


嘘。


彼の嘘が上手いのか、


彼女が気付かないほど鈍感なのか、


それでも、二人は結婚する。



神様か、なんかの類いに、


哀れみの目を向けられてるのは、きっと、あたし。
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