T I R O L
「…あたし完璧シカトだったよねー。」
自分の席に戻って
訳をメモる伸也を見ながら
ちゃこが言う。
「ん?」
「だから、あんたら。ノブは一直線に柚希とこ来たし。」
ちゃこは 不満そうに、
でも半分楽しそうに囁いた。
「てか、あんたら絶対…」
――バシッ
「痛ったあ!」
「柚!助かった!あざす!」
頭に当たったのは
さっき貸した英語のノート。
「投げて返すなよ!伸也のバカ!」
「歩くのめんどい!」
「同じ教室内で何言ってんさ!角当たってんで!? コツーンて言うたで!?」
「まあ、どんまいやな。」
「あとで覚えときや!」
"両想いだと思うけど?"
ちゃこが言った その言葉は
こんなやり取りばっかしてると
どうにも信じられない。