Be My Valentine.
Be My Valentine.
「あの……すみません、本当に来ちゃったんですけど」


社長室と書かれた扉を軽くノックして、彼の『どうぞ』の声にドキドキしながら扉を開けた。

見合いをしたのはほんの一ヵ月前、私には不釣合いな相手で……すぐに、同姓同名の勘違いとわかった。
それなのに、トントン拍子に話が進み……来月には結婚式という急展開。
私のほうはひと目惚れだったから、ラッキーと思ってOKしちゃったけど。


『会社での僕も知っていてほしいから、いつでもおいで』


その言葉を真に受けて、本当に来てしまったのは間違いだったかも。
彼の横には綺麗なスーツ姿の女性がひとり。しかも有名ブランドのチョコレートの箱――五千円はするヤツを手にしている。
それに比べて、原価数百円の手作りチョコに、百均のラッピングなんて……ここで出したら大笑いされそう。

でも――。
< 1 / 2 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop