仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
何度も唇を甘く食まれ、追い立てるようなキスに、身体から力が抜けていく。

「んんっ」

こんなキスは初めてだった。
頭の中がパニックで、どうしていいのかわからない。
ただ慧さんから施されるキスを受け止めて、時折答えるように唇を食む。

ドキドキと心臓がうるさくて、息も苦しい。


「撮影でキスをする時は、僕とのキスを思い出して。……ほら、唇を開いて」

「……は、い」

言われた通り唇を小さく開くと、慧さんの柔らかな舌が唇に侵入してきた。
舌が丹念に優しく、時に激しく絡め取られ翻弄される。

身体が熱くて仕方ない。どうにかなりそうな感覚に涙が浮かぶ。

「上手くなってきたね」

「や、もう……っ」

思わず瞼を開き、上目遣いで慧さんを見上げる。

「そんなに蕩けた顔で涙を浮かべながら言われても、全然説得力ないよ」

彼の情欲に染まるような瞳が切なげに細められる。
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