仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「藤堂、休日なのにごめんね。タクシーで良かったのに」

「いえ。西園寺ホテルのパーティーへの送迎でしたら業務内に含まれますから。帰りも私に送らせて下さい」

精悍な顔立ちをした青年は真面目な声音でキッパリと言った。

「今日の藤堂は頑ななんだ。あの土地は、昔うちがコンペで競り負けた因縁の場所だからね。ああ、藤堂は土地の他にも何か競り負けたんだっけ?」

え、それって何かデリケートな話なんじゃ? と居心地悪くシートベルトを握ると、「お気になさらないで下さい。慧様のお力になれなかったことが悔しかっただけですから」と藤堂さんは王子様に仕える騎士の如く言った。

慧さんはそれを聞くと、くくくっと悪戯な少年のように笑った。


西園寺ホテルと言えば日本で最も歴史あるホテルで、日本のホテル御三家のひとつ。

勿論そのトップに君臨するのは世界一のホテル――ホテル・エテルニタだ。

都市部にシティホテルやビジネスホテルが立ち並ぶ中、西園寺ホテルは日本の伝統を感じさせる和のホテル『SAIONJIサンクチュアリ・リゾート』のオープンを発表している。

今夜のパーティーはそのレセプションパーティーらしい。
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